スタッフが現地やモデルルームなどで、お客様と対面しながら接客を行うスタイルが一般的であった不動産業界は、新型コロナの影響がとくに大きかった業種の一つです。
しかし、最近はオンライン接客を導入して、業績を伸ばしている企業も増えてきました。
ここでは不動産業界とオンライン接客の親和性の理由はどこにあるのか、オンライン接客を導入することでどのようなメリットがあるのかについて見ていきます。
この記事の目次
オンライン接客とは
オンライン接客とは、ビデオ通話機能などのIT技術を用いることにより、オンライン上で接客サービスを提供することです。
お客様はわざわざ現地まで足を運ばなくても、インターネット環境さえ整っていれば、どこからでも接客を受けられるので非常に便利です。
不動産業界でオンライン接客が注目される理由
現在、全業種の中でオンライン接客接客を導入しているのは3割程度と言われていますが、不動産業界はとくに導入が進んでいる業界の一つです。
やはり一番大きな理由は、コロナ対策として有効であるという点です。
不動産は人生でも最大の買い物であり「実際に自分の目で確認してから購入したい」と考えるお客様が多いのは当然でしょう。
そのため、現地やモデルルームに訪れたお客様に対して、スタッフが説明を行うという接客スタイルが一般的でした。
しかしながら、対面式の接客ではコロナ感染のリスクがあるため、感染対策としてオンライン上での接客が導入されたという経緯があります。
不動産業界のオンライン接客の内容
不動産業界がオンライン上で提供する接客サービスには、次のようなものがあります。
商談
これまではモデルルームの見学会の後に商談会が開催されて、営業マンから物件の詳しい情報を収集したり、ローンの試算をしたりする商談が行われました。
こういった接客も、現在はオンライン上で行われることが多くなっています。
「対面式の商談は営業マンからの圧力が強くて苦手だ」という場合や「面と向かってだと聞きにくい質問がある」という場合は、対面式よりもオンラインのほうが気楽だと感じるお客様も多いようです。
物件の内見
不動産の情報サイトには建物の内部や外観、周囲の環境などが把握しやすいように数多くの写真を掲載していますが、写真の情報だけで物件の購入を決めるのは不安です。
不動産のように金額の高い商品を購入する際は、万が一にも失敗がないように、すみずみまで自分の目で確かめておきたいと考えるのは当然でしょう。
従来であれば、このようなお客様が不動産を直接チェックするために内見が開催されていましたが、現在ではビデオ通話機能を介して、オンライン接客で内見を行う不動産会社も増えています。
コロナの流行によって人がたくさん集まる場所には行きたくないというお客様や、物件の場所が遠くて物理的に内見が難しいお客様にとっては、非常に利便性の高い接客サービスと言えるでしょう。
重要事項の説明
不動産に関する権利や法律など重要な項目については、重要事項説明書に必ず記載しなければならず、契約が締結される前にその内容を宅建業者が購入者に説明する義務があります。
以前は重要事項の説明を対面で行う必要がありましたが、法律の改正によって現在はオンライン上で行うことが可能です。
契約
これまで不動産の契約には、記名・押印された書類の交付が不可欠であったため、オンライン上で行うことが不可能でした。
しかし、2021年にデジタル改革関連法が成立したことにより、不動産のオンライン契約(電子契約)も解禁されました。
契約を急いでいるお客様に対して、オンライン上で接客を行うことにより、スムーズな手続きを提供できますし、業務の効率化にも寄与します。
不動産業界がオンライン接客を導入するメリット
コロナへの感染を予防する以外にも、不動産業界がオンライン接客を導入することによるメリットがいくつかあります。
商圏を拡大できる
たとえば、東京にお住まいのお客様が遠く離れた北海道や九州・沖縄の土地や建物に興味を持った場合、従来の対面型接客では商談のためにお客様が地方に足を運ぶか、あるいは営業マンが東京に出ることになります。
どちらにしても時間や費用がかかるので、スムーズな取り引きには障害となってしまうでしょう。
しかし、オンライン接客であれば、移動にかかる費用や時間をなくすことが可能です。
さらに、気になるところがあれば動画を見返せるため、何度も現地に足を運ぶ手間も省けます。
地方の不動産会社の場合は、対面型の接客だとどうしても会社の周辺地域に商圏が限られてしまいますが、オンライン接客を導入することで、日本全国のお客様を相手に商売ができるようになるのは大きなメリットです。
業務の効率化が実現できる
対面で接客を行う場合、スタッフはモデルルームや物件の所在地まで移動して、お客様の対応をすることになります。
物件の所在地がバラバラであれば、移動に伴う時間も増えてしまうので、スタッフ一人が対応できるお客様の人数は減ってしまいます。
一方、オンライン上での接客であれば移動時間はないので、スタッフ一人あたりの接客回数を大幅に増やすことが可能です。
対面接客では1日5件しか対応できなかったものが、オンラインに変更することで10件対応できるようになれば、単純計算でスタッフの数を半分にできます。
業務を大幅に効率化できるうえに、人件費の節約にもつながります。
不動産業界におけるオンライン接客のポイント
これまで紹介してきたように、オンライン接客には従来の対面接客にはないメリットがあります。
だからといって、ただ単にこれまでの接客スタイルをオンライン上に踏襲したのでは、うまくいかない可能性があります。
オンライン接客を成功させるには、いくつかのポイントに注意する必要があるでしょう。
お客様にストレスを感じさせない環境を整備する
オンライン接客では、通信環境が非常に重要です。
環境に問題があり、通信速度が不足したり、頻繁に回線落ちが起こってしまったりすると、伝えたい情報も伝えられません。
最悪の場合は、お客様を失ってしまうことにもなります。
万が一、通信障害などが発生しても通信が維持できるように、複数の通信会社と契約して回線を維持するなど、安定した通信環境を整備する必要があるでしょう。
ただし、通信環境の整備にはコストがかかるので、回線品質とコストのバランスをとることが大切です。
お客様のITリテラシーを考慮する
オンライン接客を実現するためのツールはたくさんあります。
比較的身近なものとしては、ZoomやGoogle MeetなどのWeb会議システムです。
こういったツールを利用する場合は、お客様の端末にアプリをインストールしてもらう必要があります。
お客様がこういった作業に慣れているなら問題ないですが、苦手なお客様もたくさんいるでしょう。
せっかく自社の不動産に興味を持ってもらっても、ITリテラシーの不足から取り引きが成立しないのであれば、大きな機会損失となってしまいます。
専用のオンライン接客ツールの中には、URLを共有するだけでビデオ通話が可能になるものもあります。
そのようなツールを活用して、誰もが簡単に利用できるシステムを導入するべきでしょう。
オンラインならではの見せ方に配慮する
ビデオ通話を介してのオンライン接客は、対面接客と同様にリアルタイムでのコミュニケーションが可能です。
写真やグラフなど、ビジュアルに訴える接客もできます。
不動産の特長を分かりやすく説明するために、資料などを作成するのも有効な方法です。
しかし、スマホなどの小さな画面で表示できる情報量はあまり多くない点に、注意する必要があります。
たくさんの情報を伝えるために文字を小さくしてしまうと、視認性に問題が出てしまいます。
通常の対面接客と違って、オンライン上では見やすさを重視した資料づくりがより重要となるでしょう。