行政でオンライン相談の導入事例が増加している理由は、DXの推進など時代のニーズやコロナの感染拡大防止など、やむを得ない理由で緊急対応したわけではありません。
行政窓口での相談や手続きは多岐にわたりますが、それぞれオンライン相談が求められる理由や目的があります。
ここでは、自治体を中心にオンライン相談が実施されている主な導入事例と、その目的や背景、理由などをご紹介します。
この記事の目次
増加している行政オンライン相談の導入事例
行政への相談というと、これまでは直接窓口に出向いて相談するか、電話でお問い合わせをするしかありませんでした。
具体的な行政サービスの提供を望む場合には、窓口で申請するか、郵送での手続きが必要でした。
行政サービスの提供法にも変化が生まれ、最近はオンライン相談を導入する自治体などが増加しています。
行政サービスは多岐にわたり、住民向けに行政サービスを提供する自治体の窓口も多岐にわかれ、それぞれの担当職員が対応しています。
オンライン相談の導入事例が多い行政サービスを中心に、なぜオンライン化が進められたのか、理由や目的を見ていきましょう。
移住相談
少子高齢化で人口が減少し、高齢者ばかりが残る過疎地域などが増えています。
地域を盛り上げてくれる若い人を呼び込みたいと、移住の促進に取り組む自治体が増えています。
移住・定住を検討する方は都心など別の自治体に暮らしていますので、来所しないかぎり相談できないのでは、最初の一歩が踏み出せません。
オンライン相談により、自治体の担当者をはじめ、地域の方や先輩移住者と話をしたり、地域の映像を見せてもらったりして、体験移住に行くかなどを検討できます。
オンラインで地域の方とコミュニケーションをとったり、動画などを見たりすることで、移住促進を図るのが目的です。
DV相談
配偶者からの暴力や児童虐待、ストーカー行為などをされた被害者は、自治体の窓口に申し出ることで、住民基本台帳の閲覧、住民票や戸籍の附票など写しの交付を阻止する措置を講じることが可能です。
もっとも、直接役所の窓口に出向くことで姿を見られたり、後ろをつけられて暴力を振るわれたりする恐れもあります。
DV被害やストーキングにあっている方は、なるべく人目に触れずに安全な環境に逃げることが必要です。
オンライン相談を導入することで、自宅や親族の家、シェルターなど安全な場所から相談できます。
子育て相談
各自治体では「保育所が見つからない」「育児ストレスで悩んでいる」「シングルマザーで家計が厳しい」「離婚して一人で育てられるか不安」など、子育て相談にも応じています。
小さなお子さまを連れて役所で長時間相談をするのは、お子さまにも負担がかかりますし、複数のお子さまがいる場合には連れてくるのも大変です。
泣いたり、騒いだりして、相談にならない場合も少なくありません。
自宅からオンライン相談ができれば、お子さまをあやしながらや、お昼寝している間に落ち着いた環境で相談できます。
仕事をしているシングルマザーも、スマホを使って職場の休憩時間などにオンライン相談が可能です。
介護相談
「在宅介護が大変」「介護度が上がったのではないか」「利用できるサービスを知りたい」など、高齢者や療養中の方の介護を行っている方も、オンライン相談ができると便利です。
24時間介護が必要で外出が難しい方、デイサービスに行っているわずかな時間では役所との行き来が大変な方も、自宅にいながらオンライン相談ができます。
スマホで介護をしながら相談もでき、行政の担当者もどのような環境で介護されているのかなどをチェックできるので、スムーズなアドバイスや手続きにつながるのがメリットです。
手続きサポート
「自宅に書類が送られてきたけれど意味がわからない」「書き方がわからない」「提出後に不備で戻されたけれど訂正の仕方がわからない」など、困っているときもオンライン相談が可能です。
電話で説明してもわかりにくいことを、オンラインでお互いに書類の画像を共有しながら書き方の指導や確認がし合えるため、不備のない状態へ仕上がります。
業者による相談
不動産会社や工務店などが、自治体に都市計画法関連のお問い合わせや、建築制限や建築確認の相談をしたい場合、いちいち窓口に出向く必要があると、業務にも影響が出ます。
忙しい業者がオンライン相談をできれば、事務所や現場から速やかにお問い合わせが可能です。
電話と異なり、図面などを見せて確認してもらえるので、よりわかりやすくスムーズです。
障がいを持つ方も相談しやすい
障がいを持つ方向けのオンライン相談窓口の導入事例も、増加しています。
どのような導入事例があるのでしょうか。
移動せず相談できる
車椅子の方や体が思うように動かせない方、移動に介助が必要な方も、オンライン相談ができれば窓口に出向くことなく、自宅で簡単に相談や手続きができます。
オンライン手話通訳
聴覚障がいがあると電話での相談ができず、窓口に出向いても手話のできる方がいなければ、筆談などで対応することが求められます。
行政の相談内容や手続きは複雑なことも多く、その場で筆談によってやりとりをすると時間もかかり、十分な理解が進みません。
スピーディーにやりとりをするために、オンラインで手話通訳を介在させる導入事例が増加しています。
窓口に手話ができるスタッフがいなくても、手話通訳者とオンラインでつなぎ、職員と相談者のやりとりを通訳してくれる仕組みです。
外国人住民向けオンライン通訳
都市部や地方を問わず、外国人の住民が増加しています。
外国人の中には日本語が話せる人もいますが、英語でないとやりとりが難しい人、母国語しか話せない人も少なくありません。
日本語が話せても、行政の申請書類など日本語で書かれた書類は読めず、手続きができずにいる方もいます。
その地域で暮らしていくためには、地域のルールを理解したり、必要なサービスを受けたりすることが必要です。
しかし、文化の違いや価値観の違いなどもあり、なかなか理解は難しいです。
ゴミ出しのルールをはじめ、子どもの教育や健康保険、年金の手続き、税金の支払いなどについて相談したくても、言葉の壁があってスムーズに進みません。
そこで、オンライン通訳を導入する自治体も増えてきました。
自治体によって、どの国から多くの外国人が住民登録しているかに違いがありますが、すべての母国語に対応できる職員を雇うのはかなり難しいものがあります。
そこで、通訳サービス業者に委託したり、リモートワークで通訳を担ってくれる人を募集したりすることにより、相談したい外国人の母国語に応じて、オンラインで通訳ができる仕組みを導入する事例が増加しています。
外国人の相談者と職員の間に通訳スタッフが入り、オンラインにて三者でやりとりをするというサービスです。
行政のサイトをパソコンやスマホで見ると、対応している言語のアイコンが表示されており、その中から母国語や自分が理解できる言語をクリックかタップします。
すると、その言語に対応できる通訳スタッフをオンラインで呼び出せる仕組みです。
外国語を学んだ日本人の場合もありますが、日本語が流ちょうな母国出身の外国人であるケースも少なくありません。
いずれにしても母国語が通じるので、精神的にもリラックスして相談できます。
日頃の生活で、理解が難しい日本語や日本の文化でストレスを抱えているので、オンライン相談で通訳スタッフとつながると、今回相談しようと思っていた内容だけでなく、これまで困っていたことや疑問だったことを、次々に相談する方が多いです。