「うちもそろそろリモート接客を導入しないとね!」と肩を叩かれ、推進担当を任されてしまった……という方、こちらへどうぞ。リモート接客の必要性は十分に理解した。導入は決まっている。では、次に必要なことは?ここでは実際に導入するにあたり、どのようなことから考え始めていったらよいかをお話したいと思います。
この記事の目次
使ってみたらいいのに、と思うだけでは始まらない
リモート接客の推進担当を任された方はきっと、ご自身はツールを使うことに抵抗のない、むしろ使い慣れている方が多いことでしょう。しかし同じ温度感で「みんなもとりあえず使ってみたらいい」と示すだけでは、なかなか職場のみなさんを牽引していくことは難しいとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずはシナリオを描く
まずは、どんな人が使うのか、どのようなシーンで使うのかなど、導入するツールを検討するためのシナリオを描く必要があります。誰が・何のためにリモート接客をするのかは、サービスの種類によって様々です。
ケース:コールセンター
たとえば電話を使ったカスタマーサポートを行っている会社が、顧客対応にチャット機能の導入を検討するとします。
ここで考えることは、
- 誰がチャット機能で応対するのか…チャット専用スタッフを雇うのか、社員が空いている時に対応するのか
- チャットbotにしてしまって自動対応にするのか。…そのチャット機能を常駐させるPCの台数は足りるのか?
- ライセンスはどのぐらい必要か?
- チャットで受けた顧客の履歴はどのように管理していくのか?
- 電話応対への切り替えはどのようにするか。
などなど。
膨大な項目を検討する必要がありますが、「誰が・何のために」を事前にはっきりさせておくことで自ずと答えがはっきりします。
「人件費削減のためにチャットを導入する」のであれば、チャットbotがどこまで対応できるかを見極めて、スタッフが引き継ぐシナリオを描くことになりますし、スタッフのチャットスキルの研修が必要になります。
また、顧客側からどのようにサービスにアクセスすることになるのかを描く必要もあります。顧客の属性を考えて、顧客はPCを使えるのか、スマホの方がいいのか、電話でなくてはダメなのか、など。
こうして複数のシナリオを検討していくことによって、実はチャットbotではなく対面通話サービスの方が向いている、などということがはっきりしてきたりもするのです。
このようにして、必要な体制や心構えを明確にしていきます。
システムや業者の選定・決定
具体的にどのようなツールをどのような手順で導入するのかというのは、他の記事でもお話していますので、ご参照ください。
スタッフの教育体制
必要な体制や心構えが明確になってくると、一緒にリモート接客を作り上げていくスタッフの教育が課題となってきます。
導入の目的や、期待される効果の理解を得る
新しいシステムを導入する際はどんな現場にも、変化への抵抗が起こると考えられます。それまでの体制に馴染み、高いパフォーマンスをアウトプットしようと真面目に勤めてきたベテランスタッフほど、実はその抵抗が大きかったりするかもしれません。
現場の業務をよく知るベテランスタッフの理解を得ることが、効果的・効率的なシステムの導入につながるとも言えます。まずは、新しいシステムをなぜ、何の目的で導入するのかをきちんと説明することが必要でしょう。
前項にて描いたシナリオをもとに、導入後のスタッフの業務にどのように影響するのか、今後どのような働きが求められるのかの理解を得て、その後のマニュアル制作作業等に積極的に関わってもらえるようにします。
マニュアルを作り、研修をする
新しいシステムの操作マニュアルや、業務のマニュアルを整備します。
マニュアルの制作は、現場を良く知るスタッフに担当してもらうようにします。そして、できたマニュアルを元に現場のスタッフへ業務の流れを研修などで周知し、内部でのシミュレーションを行いブラッシュアップしていきます。
マニュアルは最初にあまり作り込み過ぎず、改訂しやすい状態にしておくとよいでしょう。たとえば、現場に入った新しいスタッフが、そのマニュアルを見て業務を遂行できるのか確認し、フィードバックを得るなどします。
その際に、マニュアルを改訂するのか、あるいは業務の流れを変えた方がいいのかを検討することで、スタッフと共に新しいシステムを取り入れる前向きな雰囲気が生まれると、プロジェクトも進めやすくなりそうですね。
仕事の流れが変わることを理解する
対面で接客していたものが、遠隔での接客になるわけですから、必ず仕事の流れは変わる、と理解していくことが重要です。
ここまでのお話で、リモート接客の導入を推進する担当者としては、
- 導入するシステムを検討し決裁を取る。
- 導入する新システムを現場のスタッフに理解してもらう。
- 顧客に新しいシステムの影響があれば説明をする。
などの対応が必要となることがご理解いただけたかと思います。
新しいシステムを導入することにより、自社サイドにどんな変化が起こるのか、そして顧客の行動に何か変化はあるのか、そしてそのフォローにスタッフはどのように動いたらよいのかを理解することが、導入への早道になるのだと考えられます。
感染症で身動きが取れず、リモート接客が目新しかったころは、すべてが試行錯誤でOKだった側面もあり、ある種のチャレンジが好意的に受けとめられていた時期は確かにありました。しかし「ダメもとでやってみよう」というフェーズはすでに過ぎ、遠隔でのサービスが増加するにつれ、こなれたサービスに顧客の方が慣れてきているようにも見受けられます。
早いに越したことはない、そんな風に焦ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、慌ててシステムだけ導入しても、激変する業務の流れについて共に働くスタッフの理解を得られなければ、効果的なサービスの反映はなかなか進まないものです。じっくりと納得のいくシナリオを描き、しっかりと周囲の理解を得ながら進めていけることが望ましいですね。