オンライン接客のメリットと課題

コロナの流行によって、店舗でこれまで行われてきた対面型の接客サービスを提供することが困難になっています。
これを背景に、従来の接客サービスに代わるものとして、非対面型のオンライン接客サービスを導入するケースが増えてきているのです。
ここでは、オンライン接客を導入することのメリットと同時に、導入した企業や今後の導入を検討している企業の多くが抱えている、オンライン接客ならではの課題についてもくわしく見ていきます。

オンライン接客とは

オンライン接客とは、IT技術を用いることで、インターネット上で顧客に対して接客サービスを行うことです。
広義では、リモート接客と同じものとして扱われることも多いです。
ただし、リモート接客はあくまでも、物理的に距離の離れた場所にいる顧客への接客サービスを意味します。一方のオンライン接客は、インターネット上で行われる接客を意味するため、厳密には違うものです。

オンライン接客の種類

オンライン接客には、使用するツールなどの違いにより、いくつかの種類にわけられます。

SNS

LINEやInstagram、Twitterなど、SNSを使用したオンライン接客の特長は手軽さです。
普段から利用している人も多いツールなので、操作方法などに迷うことが少なく、短い文章で気軽にやりとりできます。
一度入力すれば、同時にたくさんの人に見てもらえるのも、この方法の良いところです。
動画も掲載できるので、商品やサービスの性能・サイズ感などを顧客に具体的にイメージしてもらいやすいという利点もあります。

チャットボット・ポップアップ

チャットボットはロボットやAIを搭載することで、顧客の質問に対して最適な回答や提案を行うツールのことです。
接客にスタッフを配置する必要がないので、24時間いつでも対応できるという利点もあります。
ポップアップは、最適なタイミングで顧客の求めているであろうポップアップを表示するツールです。
たとえば、Webサイトに訪れてきた顧客が、一定時間同じページにとどまっていれば次の行動を促すなど、顧客のサイト閲覧履歴やWeb上の行動パターンなどを分析して、最適なアプローチを行います。

ビデオ通話

コロナが流行した際にリモートワークで使われたZoomやGoogle Meet、Skypeなどを活用することで、ビデオ通話を介したオンライン接客も可能です。
この方法を活用すれば、従来の店舗型接客と同様に、お互いの表情などを確認しながら、リアルタイムでコミュニケーションを取れます。商品の状態やくわしい情報などもチェックすることが可能です。

オンライン接客の具体例

オンライン接客は、特定の業種と非常に相性の良いマーケティング手法でもあります。
とくに、次のような業種は積極的にオンライン接客を導入し、業績を伸ばしています。

アパレル業界

洋服や靴などを扱うアパレル業界は、商品を選ぶ際にサイズ感が非常に重要なポイントになります。
また、写真だけでは細かい部分まで、デザインや質感が確認できないこともあるでしょう。
こういった不満を持つ客に対しても、ビデオ通話を用いることで商品をくわしく見てもらえます。
チャットで疑問を解消してもらえるなどのサービスを提供することも可能です。

コスメ業界

コスメについても、アパレルと同様に色や質感が非常に重要な商品です。
よりくわしい情報を伝えられるオンライン接客は向いています。
ビデオ通話を通じたメイク方法の指導や、AI機能を用いたパーソナルカラー診断なども好評です。

不動産業界

不動産は高い買い物なので、失敗しないためにも内見やモデルルーム見学が欠かせません。
しかし、コロナにより心理的に来場しにくかったり、遠くて物理的に無理だったりすることもあるでしょう。
しかし、オンラインであれば、コロナや距離は気にせずに物件の様子を確認できますし、気軽に質問することも可能です。

オンライン接客を導入することによるメリット

顧客と直接対面せずに接客を行えるオンライン接客は、コロナ対策として非常に効果的ですが、それ以外にも数多くのメリットがあります。

顧客の利便性が向上する

オンライン上で接客を行うことにより、物理的な障壁を取り払えることは大きなメリットです。
北海道や九州の顧客が、遠く離れた東京の店舗に足を運ぶには時間も費用もかかりますが、オンライン上であれば移動不要で、いつでも好きなときに接客を受けられます。
また、店舗が混雑していれば、顧客を待たせてしまうことがありますが、オンラインであれば最適なタイミングで接客サービスを提供することが可能です。
店舗側としても、機会損失を最小限に抑えられます。

複数のチャネルで顧客に対して商品やサービスを訴求できる

オンライン接客を導入している店舗のほとんどは、オンライン接客と同時に、従来の対面型接客も並行して行っています。
実店舗に足を運んでいただいた顧客だけでなく、ネットからアクセスしてきた顧客へも訴求することが可能です。
より多くの顧客を取り込んだり、新規の顧客を獲得したりするチャンスが増えます。

人材の効率化により人件費を削減できる

オンライン接客であれば、従来のように店舗という枠に縛られることがありません。
店舗型接待を提供するためには、一店舗に最低一人のスタッフが必要です。
一方、オンラインであれば、すべての店舗の接客を一人のスタッフが担当することも可能になります。
また、在宅ワークやテレワークといった働き方も実現できるので、最小限の人材で最大の効率が期待できます。

オンライン接客の課題

これまで紹介してきたように、従来の接客と比べて、オンライン接客には多くのメリットが存在します。
しかし、課題がないわけではありません。
課題をどのように克服するかが、オンライン接客の成功の可否を左右すると言っても過言ではありません。

どのツールを選ぶべきかわからない

オンライン接客を実現するツールには、いくつか種類があることはすでに説明しました。
これらのツールは無料で利用できるものもありますし、有料なものもあります。
無料のツールを利用すれば、コストを低く抑えられますが、導入方法や操作方法については自ら学習しなければなりません。
一方、有料のツールを使えば導入コストは高くなりますが、業者からサポートを受けられるという利点があります。
どのようなツールを選ぶべきか判断するためには、ある程度専門的な知識が求められるため、まずはツールの特長を理解することが必要になります。

顧客と信頼関係を構築するのが難しい

ビデオ通話を介したオンライン接客では、相手の仕草や表情をリアルタイムで確認できるので、対面での接客と同様のコミュニケーションを取ることが可能です。
しかし、チャットやSNSなど、テキスト主体のコミュニケーションの場合、顧客の心情を読み取ることは難しくなります。
顧客の購買意欲をどのように刺激するべきか、売上を伸ばすためには大きな課題となる部分です。

店舗側にも顧客側にもITリテラシーが要求される

オンライン接客のためにツールを導入しても、スタッフがそのツールを使いこなせなければ、十分な成果を上げられません。
スタッフが操作にもたついていれば、顧客は不安な思いになって逃げ出してしまうからです。
ツール操作を習熟するために研修を行ったり、マニュアルを作成したりするなど、十分な用意が必要になるでしょう。
顧客についても同様です。
オンラインで接客を受けるために、LINEやZoomのインストールが必要だと言われても、不慣れな人にとってはかなりの敷居の高さです。
理解できずに、利用をやめてしまう人も少なくないでしょう。
なるべく多くの顧客に利用してもらうためにも、誰もが簡単に使えるツールを用意しなければなりません。

安定して利用できる通信環境を確保する

ツールを導入しても、通信環境が脆弱であれば、満足な接客を行えません。
顧客にストレスを与えないためにも、快適に動作する通信環境を確保する必要があります。
一般の通信回線のほかに、専用の通信回線を増設すれば快適な環境を整備できますが、費用がかさんでしまいます。
できるだけコストをかけることなく、安定した通信環境を用意できるかは、多くの企業にとって課題となるでしょう。